対策は万全?フリーランスに必要な備え

保障・保険

会社員や公務員などの給与所得者に比べて、受けることができる社会保障が少ないフリーランス。万が一の際に慌てずに済むよう、可能な対策はしておきたいものです。今回は、フリーランスに必要な備えについて解説します。

こんな方におすすめの記事です
  • フリーランスにはどのような備えが必要か知りたい
  • フリーランスで働けなくなった場合に備えたい
  • 損害賠償リスクに備えたい
  • フリーランスの失業や廃業に備えたい

病気やケガで働けなくなったときの備え

会社員や公務員の方が病気やケガで働けなくなった場合、一定の条件を満たせば勤務先で加入している健康保険から傷病手当金が支給されます。

一方フリーランスの方の場合、加入している国民健康保険からは傷病手当金を受けることができません。また前勤務先の健康保険を任意継続している場合も、退職後の病気やケガについては傷病手当金を受けられないことが一般的です。

以上のことから、フリーランスの方は病気やケガで一定期間働けなくなった場合に備えて、民間の保険に加入しておくと安心です。このような場合に不足した収入をカバーするための保険には「就業不能保険」と「所得補償保険」があります。

就業不能保険は生命保険会社、所得補償保険は損害保険会社が取り扱っていることが一般的。保険金額の設定方法や保険期間など細かな違いはありますが、基本的な仕組みは同じです。

ここに注意!!

就業不能保険や所得補償保険と間違われやすい保険に「収入保障保険」というものがあります。これは生命保険の一種で、病気やケガで働けなくなった場合の収入を保障するためのものではありません。間違って加入しないよう、十分に注意しましょう。

取引先とトラブルを起こしてしまったときの備え

会社員の方が取引先とトラブルを起こしても、勤務先の会社が損害賠償金などを負担するケースが多いですが、フリーランスの方は自分でその責任を負う必要があります。

トラブルの内容や影響金額によっては、多額の損害賠償を請求されることも。業種や受注内容によってさまざまなケースが考えられます。

フリーランスで起こりうるトラブル
  • 納期に間に合わず、取引先のサービス開始を遅延させてしまった
  • 納品したシステムに不具合が見つかり、取引先の営業に支障を与えた
  • 取引先から得た機密情報を漏洩してしまった
  • 納品したデザインや記事が著作権を侵害していた

万が一損害賠償を請求されるような事態に備えるためには、民間の損害賠償保険への加入を検討しましょう。近年はフリーランス向けの損害賠償保険も出てきました。損害賠償を請求されてしまってから困らないように、事前の加入をおすすめします。

失業時や廃業時の備え

会社員や公務員などの給与所得者が失業した際は、離職利用が会社都合または転職などを目的とした自己都合の場合、退職前の勤務先で加入していた雇用保険から失業手当を受けることができます。

一方、フリーランスの方が何らかの事情で事業を継続できなくなった場合、失業手当を受けることができません。そのためフリーランスの方は万が一に備えて、ある程度の資金を蓄えておく必要があります。

急な失業や廃業に備えるなら、すぐに現金化しやすい方法で運用するのがよいでしょう。以下はフリーランスの方におすすめの運用方法です。

つみたてNISA

少額から投資信託をコツコツ積み立てることができ、積み立てた資産はいつでも売却可能つみたてNISA運用益は最長20年間非課税扱いとなるので節税効果も期待できます。

積立金額の上限は年間40万円まで。大きな金額の資産運用には向いていませんが、投資できる投資信託は手数料が安くシンプルな仕組みの商品に限定されているため、少額から運用を始めたい初心者の方向けの制度です。

小規模企業共済

フリーランスの方が失業や廃業に備えるためには、小規模企業共済に加入するという方法もあります。小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者・役員の方が加入できる退職金制度。フリーランスの方が廃業した場合、それまでに積み立てた掛金合計額に所定の利息が上乗せされた金額を受け取ることができます。

また廃業するまではいかずとも、一時的に資金繰りが困難になった場合などに低金利で事業資金等を借り入れることができる貸付制度も利用可能です。

掛金は月額1,000円~7万円(年額1.2万円~84万円)なので、つみたてNISAより多くの資金を積み立てることができますよ。さらにその年の掛金は全額所得控除の対象となり、所得税や住民税を軽減することもできます。

つみたてNISAと小規模企業共済の特徴は下表のとおり。2つの制度を比較して、自分にあった運用方法を選びましょう。

つみたてNISA小規模企業共済
利用者条件日本居住の20歳以上の方・個人事業主の方(開業届が必要)(*2)
・小規模企業の経営者・役員の方
申込先証券会社中小機構
積立金額/掛金年間40万円まで月額1,000円~7万円
(年額1.2万円~84万円)
積み立て・支払い頻度月1回が一般的(*1)月払い・半年払い・年払いから選択可能
メリット・運用益が非課税になる
・いつでも売却・引き出し可能
・掛金が全額所得控除の対象
・事業資金の貸付制度を利用できる
デメリット・元本割れする可能性がある
・積立金額は所得控除の対象とならない
・20年未満で任意解約した場合は元本割れする(*3)
・インフレのリスクに対応できない
(*1)証券会社によって異なる
(*2)条件や職業によっては加入できない場合あり
(*3)廃業の場合は、1年以上掛金を納付していれば元本割れしない


フリーランスのための資産形成制度
厚生年金や退職金がないフリーランスの方は、老後のために十分な資金を蓄えておく必要があります。本記事ではフリーランスが利用できる5つの資産形成制度についてご紹介。それぞれの制度の特徴と、どのような人に向いているかを解説します。

まとめ

フリーランスの方で病気やケガ、失業時の備えについては対策や意識をしている方は多いかと思いますが、損害賠償については独立して間もないフリーランスの方は見落としがちなポイントかもしれません。

ちなみにわたしは、フリーランス向けベネフィットプランを提供する「フリーランス協会」に入会しており、そこで自動付帯される賠償責任保険に加入しています。

フリーランスでも必要な対策を講じることで、万が一に備えることは十分可能。いざというときのために、しっかり準備しておくことをおすすめします。

※本記事は2020年6月1日時点の情報をもとに執筆したものです。