老齢基礎年金を満額もらえる条件とは?未納期間がある場合は注意!!

税金・制度

老後の収入源となる老齢基礎年金(国民年金)。国民年金保険料を全期間漏れなく納めないと満額もらえないことをご存知でしょうか?本記事では、老齢基礎年金を満額受給できる条件と、未納期間や免除期間がある場合にもらえる年金額はどうなるのかを解説。国民年金保険料の納付状況を確認する方法も説明します。

納付漏れなどで将来老齢基礎年金が満額もらえないということがないよう、しっかりチェックしていきましょう。

こんな方におすすめの記事です
  • 老齢基礎年金を満額受給できる条件が知りたい方
  • 未納期間や免除期間がある場合、受給額はどうなるかを知りたい方
  • 国民年金保険料の納付状況の確認方法を知りたい方

老齢基礎年金を満額受給する条件

老齢基礎年金とは、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、原則65歳から受け取ることのできる公的年金です。

老齢基礎年金を満額を受給するためには20歳から60歳になるまでの40年間(480ヵ月)漏れなく国民年金保険料を納める必要があります。

満額受給額できる老齢基礎年金額は毎年度改定されており、2020年度(令和2年度)の満額は781,700円となっています。

老齢基礎年金の計算方法

受給できる老齢基礎年金は、満額受給額に全加入期間(480ヵ月)における保険料の納付月数の割合を乗じて計算します。保険料の未納期間があると満額受給額できないので注意が必要です。

また国民年金には、経済的な理由で保険料の納付が困難な場合などに申請することで保険料が免除・猶予が受けられる「保険料免除・納付猶予制度」というものがあります。

国民年金保険料の免除期間がある場合、その期間の老齢基礎年金は満額支給されるわけではなく、免除される金額に応じて以下の割合で年金額に反映されます。

  • 全額免除:8分の4
  • 4分の3免除(4分の1納付):8分の5
  • 半額免除(半額納付):8分の6
  • 4分の1免除(4分の3納付):8分の7

昭和16年4月2日以降に生まれた方の老齢基礎年金の計算式は以下のとおりです。

一方、猶予期間がある場合、老齢基礎年金の受給資格期間にはカウントされますが、老齢基礎年金額を受給するための納付期間にはカウントされません。一定の所得以下の学生が申請により保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を利用した場合も同様です。

国民保険料の納付状況における老齢基礎年金への影響は以下のとおりです。

未納期間や免除期間がある場合の老齢基礎年金

ここでは国民年金料の未納期間や免除期間がある例を用いて、受給できる老齢基礎年金の計算をしてみましょう。

ケース①:国民年金保険料の未納期間がある場合

まずは未納期間が60ヵ月ある場合の老齢基礎年金額を計算していきます。

■前提条件
満額受給額:781,700円
加入可能月数:480ヵ月(40年)
納付済月数:420ヵ月
未納期間:60ヵ月(5年)

計算式

満額受給額 × 納付月数 ÷ 加入可能月数
= 781,700円 × 420ヵ月 ÷ 480ヵ月
= 683,988円(小数点以下、四捨五入)

未納期間60ヵ月分がいっさい年金額に反映されていないことがわかりますね。次の免除期間があるケースとどれだけ金額に差が出るか見ていきましょう。

ケース②:国民年金保険料の免除期間がある場合

次に免除期間が60ヵ月ある場合の老齢基礎年金を計算します。免除の種類は「全額免除」とします。

■前提条件
満額受給額:781,700円
加入可能月数:480ヵ月(40年)
納付済月数:420ヵ月
全額免除月数:60ヵ月(5年)

計算式

満額受給額 × (納付月数 + 全額免除月数 × 4/8) ÷ 加入可能月数
= 781,700円 × (420ヵ月+ 60ヵ月 × 4/8) ÷ 480ヵ月
= 732,844円(小数点以下、四捨五入)

国民年金保険料を全額納付していない期間が同じ60ヵ月ある場合でも、保険料免除制度を利用するだけで年金額を4万9,000円程度増やすことが可能です。65歳~90歳までの25年間老齢基礎年金を受け取ると仮定すると、未納の場合と比べて約122万円多く受給できることになります。けっこう大きな差だと思いませんか?

未納期間と猶予期間の違い

老齢基礎年金の受給要件を満たしている場合、猶予期間は未納期間と同じく老齢基礎年金額を受給するための納付期間にはカウントされません。

ただし未納期間と異なり、猶予期間は老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。老齢基礎年金の受給資格期間は、原則「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」の合計が10年以上であり、猶予期間は保険料免除期間に含まれます。

たとえば保険料納付済期間が60ヵ月(5年)で未納期間が同じく60ヵ月(5年)ある場合、受給資格期間の10年に満たないので老齢基礎年金は受給できません。一方、保険料納付済期間が60ヵ月(5年)で猶予期間が60ヵ月(5年)の場合、「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」の合計が10年となるため、満額ではないものの老齢基礎年金を受給することができます。

国民年金保険料の納付状況を確認する方法

フリーランスなどの第1号被保険者は、自ら国民年金保険料を納める必要があります。そのため納付漏れがないか確認することは非常に重要です。また学生時代に家族が「学生納付特例制度」を申請してくれていたなどの理由で、自分に免除・猶予期間があることに気付いていないケースもあります。

老齢基礎年金額を満額受給できるチャンスを逃さないためにも、ご自身の国民年金保険料の納付状況を一度チェックしておくとよいでしょう。

国民年金保険料の納付状況は、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」でインターネットから確認できます。ねんきんネットを利用するためには利用登録が必要です。ご自身の基礎年金番号と「ねんきん定期便」に記載されているアクセスキー(17桁の数字)があればすぐに登録できます。

また政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」から連携してねんきんネットを利用することも可能です。マイナポータルからねんきんネットを利用する場合、ねんきんネットの利用登録は必要ありませんが、マイナポータルにログインする際にマイナンバーカードと暗証番号が必要になります。

ねんきんネットで確認した納付状況が認識と異なる場合は、お近くの年金事務所や年金相談センターで詳しく調べてもらいましょう。

未納や免除・猶予期間がある方は保険料の納付・追納を!

未納期間や免除・猶予期間がある場合、後から保険料を納めることで老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることが可能です。未納分がある場合は2年以内であれば納めることができます。免除・猶予期間がある場合は10年以内であれば保険料を納めることができます。

国民年金保険料の納付や後払い(追納)が可能な月数・金額を正確に知りたい場合は、前述したねんきんネットで確認することができますよ。

ワンポイントアドバイス

国民年金保険料は納付書による支払いのほかに、口座振替やクレジットカードで支払う方法もあります。納付書での支払いを忘れがちな方は、これらの納付方法に切り替えるのも一つの手段です。

まとめ

国民年金保険料を納めていない期間があっても、申請をして保険料の免除・猶予の承認を受けるか、申請をせずに未納扱いになるかでは、将来受け取ることのできる老齢基礎年金の金額が違ってきます。

厚生年金に加入できないフリーランスの方にとって老齢基礎年金は老後の大事な収入源です。国民年金保険料の納付が困難な場合は「保険料免除・納付猶予制度」を利用して、年金額を少しでも増やすことをおすすめします。

すでに未納や免除・猶予期間がある方は可能な限り該当期間の保険料を納めて、将来の年金額を減らさないようにしましょう!

※本記事は2020年9月29日時点の情報をもとに執筆したものです。